LT値(乳酸閾値)を実測しました。フルマラソンのタイムを予測する。

横浜医科学センターでLT値を測定しました。簡易的な方法ではなく、実際に血中の乳酸濃度を調べるというものです。

このLT値とは、全身持久力を評価する指標のひとつ。このLT値を知ることによって、フルマラソンではどれほどのペースで走れば無理なく完走できるのか。普段のトレーニングはどのくらいの負荷が効果的か。といったことが分かるのです。

LT値測定とは?

トレッドミル(3分走+1分休憩)×6本。3分ごとに徐々にペースを上げていきます。

(市民ランナーの乳酸カーブ例:スポーツ医科学センターのチラシより引用)

それぞれの休憩1分の間に耳たぶから採血して、乳酸値濃度を測定し、その上昇度合い(カーブ曲線)を調べます。

この上昇カーブが緩やかなほど、乳酸が増えづらく持久力に優れ、上昇カーブが急なほど、乳酸がすぐ増えて疲れやすい。

血中乳酸濃度が2ミルモル/Lの時点が「LT」これ以上増えると無酸素運動の比重が増えてくる閾値。なので、このLTペースで走れば無理なく有酸素運動が続けられるレベル。

この乳酸カーブ例だと、左から右に行くほど持久力が優れ、一番右だと290m/分の速度になって初めて2ミリモル(LT)を超える。このスピードなら2時間29分でフルマラソン完走出来ると分かる。

乳酸の生成速度と分解速度の勝負です。筋持久力のある人は、運動強度が上がって乳酸が生成されても、一方で分解(除去)能力が優れているようです。結果、このカーブが緩やかになり、フルマラソンが速い人。というロジックです。

では、例によって(苦手?だった化学の世界で)このロジックを自分なりに調べて整理してみましたのでご参考ください。

「乳酸」とは悪者?

乳酸値が増えるに従い、疲れる。ということは乳酸値は悪者のようですが、乳酸は、実は単にエネルギー代謝の産物です。

ミトコンドリアのところでエネルギーが生み出される仕組み、ATPというエネルギー乾電池のことを書きました。

この過程で乳酸が副産物として発生します。

酸素が供給されている状況では問題なく楽に走れるが、負荷が上がると、そのプロセスが間に合わなくなり(LTの限界)、無酸素運動(解糖系によるエネルギー産生)に切り替わる。

  • 解糖系の産物: グルコースが解糖系を通じてエネルギー(ATP)を生成する際に、無酸素運動状況下ではピルビン酸から生成される産物。無酸素条件下で、乳酸の生成されます。
  • 乳酸は再利用できる: 乳酸は、筋肉や他の臓器でエネルギー源として一時的に蓄えられ、酸素供給が回復した後、乳酸はピルビン酸に再変換され、ミトコンドリアで有酸素代謝に取り込まれてエネルギーとして利用されます。

実は無害。むしろ、いいヤツそう。

では何故、今回のトレッドミルで実践した乳酸値としてのLT値、これと比例して疲れてくるのでしょうか?

疲労の原因は?

実は乳酸そのものではなく、その関連する変化が疲労の原因

  • 酸性化: 高強度の運動では、乳酸の生成と共に水素イオンも急速に増加します。この水素イオンの蓄積が筋肉の酸性化を促進し、疲労感を増大させます。したがって、乳酸値の増加と疲労の進行は、実際には水素イオンの蓄積に起因するものです。
    酵素の阻害: 酸性化により、ATPを生成するための酵素や、筋肉の収縮を制御する酵素の活動が阻害されるため、筋肉が効率的に働かなくなります。これが、運動中に感じる疲労原因となります。

では持久力UPのため、なぜ乳酸を除去する必要があるのか?

乳酸を除去すること、3つの過程で良いことが・・・(上の手書き資料の赤い部分)

ピルビン酸に変換(戻る)

  • 乳酸→ピルビン酸の過程
    再変換される際、水素イオンも利用されるため乳酸を除去することは筋肉の酸性度を下げることに繋がります。
    これにより、酵素の機能や筋収縮の効率が回復し、疲労が軽減されます。(上で書いた酸性化の逆回転ですね)
  • ピルビン酸→クエン酸回路の過程
    有酸素の代謝として再びエネルギーを生成することが可能になります。(手書き資料の有酸素運動へ移行)。
    このプロセスがスムーズに行われることで、持続的な運動が可能になります。

グルコースとして再利用

  • 前述した通り、肝臓では、乳酸がグルコースに再合成されるます。これにより、乳酸が血中に蓄積するのを防ぎ、エネルギーとして再利用されます。

要するに、乳酸そのものは疲労の直接的な原因ではなく、むしろエネルギー供給や代謝調整に関与する重要な物質。でも乳酸生成に伴う水素イオンの蓄積が筋肉の酸性度を高め、酵素の働きや筋収縮を阻害し、結果として疲労が生じてしまうということですね。

そして、乳酸の除去や処理能力を高めることは、疲労を軽減し、運動パフォーマンスを維持するために重要だと言えそうです。

ではどんなトレーニングでLT値を上げられるのか?

LT値を改善して筋持久力を向上させるためには、インターバルトレーニングはよく知られていますが、いろいろなトレーニングが有効のようです。

これらのトレーニングで、乳酸の処理能力を高め、より高い運動強度での持久力を向上させたいところです。

1.インターバルトレーニング

  • 高強度インターバルトレーニング: 高強度の運動と低強度の繰り返すトレーニングです。例えば、1分間全力で走り、その後2〜3分間の低強度のランニングや歩行を行い、これを数セット繰り返します。
  • LTインターバル: 自分のLT値に近いペースで一定時間(5〜10分間)運動を行い、その後短時間の回復を挟んで再度繰り返します。これにより、LT値に近い運動強度での耐久力が向上します。

2.有酸素トレーニング

  • LT付近のランニング: LT値の少し下のペースで20〜40分間連続して走るトレーニングです。このトレーニングは、乳酸を効率よく処理し、長時間持続する能力を高めるために有効です。
  • 長時間の有酸素トレーニング: 低〜中強度の有酸素運動を長時間(60〜90分以上)行うことで、ミトコンドリアの増加や酸素供給能力が向上し、結果的にLT値が改善されます。

3.クロスフィットトレーニング

  • クロスフィットやサーキットトレーニングは、さまざまな運動を組み合わせて行うことで、全身の筋持久力を高めつつ、乳酸処理能力を向上させます。異なる筋群を使うことで、全身の持久力がバランスよく強化されます。

4.上り坂トレーニング

  • 坂道を走るトレーニングは、通常のランニングよりも高い強度で行うことができ、乳酸の生成と処理能力を効果的に高めます。また、心肺機能や筋力も同時に強化されます。

5.栄養と休養

  • トレーニング後の栄養補給や十分な休養も、乳酸処理能力を向上させるために重要です。特に、運動後のタンパク質と炭水化物の補給は、筋肉の修復と回復を促進し、次のトレーニングに備えるために必要です。

以上、これらのトレーニングを組み合わせて実践することで、LT値を向上させることが可能です。継続的なトレーニングと適切な回復を繰り返すことで、筋持久力が向上し、より高い強度での運動を長時間持続できるようになるはず。

やれば・・・ですね。

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